ネット碁初段からリアル碁会所へ——そして五段へ

この記事はプロモーションが含まれています。

ネット碁で初段くらいの棋力になってきた頃、ふと「碁会所にも行ってみたいなあ」と思うようになりました。当時は子どもが生まれたばかりでバタバタしていましたが、なんとか時間をつくって、2週間に1回くらいのペースで宜野湾市にあった琉球棋院という碁会所に通うようになりました。

初めて入るときは緊張して、「初段でも入っていいのかな?」とか、いろいろ考えてました。今のようにネットで評判を調べたり、ホームページを見ることもできなかったので、ほぼ飛び込みです。でも、席亭の仲里さん(六段)や常連の皆さんが温かく迎えてくれて、本当にうれしかったのを覚えています。

仲里さんの碁は、厚み重視でじっくり打つタイプ。終盤になると一気に詰めてくるような迫力がありました。今まで力碁一辺倒だった自分にとっては新鮮で、「こんなかっこいい碁があるのか!」と衝撃を受けました。今でもあんなふうに厚みのある碁を目指してますが、なかなか真似できません(笑)。

最初は5子置きで始まりました。仲里さんは打ってはくれるけど、教えることはほとんどなし。ひたすら対局して、あとは自分で考えるスタイルでした。対局後、なんとなく記憶を頼りに盤に並べ直して、「なんでここに打ったんだろう?」「どういう狙いだったのか?」とひとり反省会。仲里さんは“勝つ碁”を打ってたというより、“きれいな碁”を打ってくれてたんじゃないかなぁと、今になって思います。たぶん、それが無言のメッセージだったのかも。

時間的にはなかなか厳しかったですが、子どもを寝かしつけたあとに並べたり、NHK杯の対局を覚えて並べ返したり。そうして少しずつ力をつけていきました。

リアル碁会所の魅力

最近はネット碁が主流ですが、リアル碁会所の魅力ってやっぱりあるんです。石を打つ「パチン」って音、相手の手つき、盤をはさんでの静かな時間——こういう“空気”はリアルでしか味わえません。

そして何より、終局後の検討が自然に始まるのがいいんですよね。「あそこはやられたなあ」とか「こっちはちょっと欲張りすぎたかな」とか、笑いながら一局をふり返るのはネット碁ではなかなかできない体験です。

「碁会所って怖そう」「自分なんかが行っていいのかな」と思ってる方もいるかもしれません。でも、級位者でも初段でも全然OKです。むしろ、そういう人こそ歓迎してくれるところが多いです。今思えば、当時の自分に「大丈夫やで」って言ってあげたいです。

五段になるまでにやってきたこと

続けてこれたのは、本との出会いも大きかったです。別記事でも紹介してますが、

この3冊は自分にとって“効いた本”です。依田ノートで3段くらい、戦術と戦略を読んで5段まで上がった実感があります。

詰碁や手筋の本はあまり好きじゃなくて(笑)、今でもあんまり読んでません。基本は「なんとなくこんな感じかなぁ」で打ってます。それでも、5年ほどかけて、ちょうど30歳の頃には仲里さんと先で打たせてもらえるようになりました。自分にとっては大きな節目でしたね。

壁を越えるために必要だったこと

囲碁には、初段の壁、3段の壁、5段の壁……と段階的に「越えるべきもの」が現れます。とくに初段~3段でつまずいている方に多いのが、「手抜き」ができないこと。

相手が打ったところにすぐ反応してしまいがちですが、まずは「これは手抜きできないか?」と考えるクセをつけると変わります。読みが必要になるけど、失敗してもいいので「先手を取る」という意識で打つと、ぐっと強くなれます。

石の強弱も同じです。自分の石が強いのか、相手の石が弱いのか——それが判断できるようになると、自然に手の優先順位が見えてきます。「二子の頭」「千両曲がり」など、見逃してはいけない形の急所も要チェックです。

それから、「ノビキリ」も忘れずに。地味だけど大きい手が多いです。逆に序盤の2線や1線は、めちゃくちゃ大きいこともあるけど、基本的には小さい。無視してもだいたい問題ないです。

石を切るときは、先手で切ること・形よく切ること。相手に「つながるだけ」の手を打たせて、実質1目も得しない状況に持ち込むのが理想です。

攻めるとは、取ることじゃない

「攻め=取る」と思っていた時期もありました。でも、今は違います。「どうぞ生きてください」って手を打つのも、立派な攻め。相手に生きてもらって、自分は外回りを大きく囲う。そんな打ち方ができると楽しくなってきます。

囲碁では、死んでも打っちゃいけない手ってあるんですよね。生きるだけの手を打つくらいなら、形を崩されないように工夫して攻め合いに持ち込んだ方がいいこともあります。逆に、相手の形を崩す工夫も大事。

そして、置き碁で上手が打った手に騙されないこと!その手は本当にでかい?今、自分が先手で打つべき場所は?とにかく「先手で大きいところに打つ」ことを意識しましょう。

最近はAIが「ここが大きいですよ」と教えてくれるので、昔よりずっと学びやすい環境になりましたね。でも大事なのは、その意味を自分で考えること。そこに気づけると、グッと伸びます。

今は楽しむ碁を

あの頃は強くなることだけを考えて打っていましたが、最近は「楽しい碁」を大事にしています。勝っても負けても、「いい碁だったな」と思えるような一局。もちろん、負けたら悔しいんですけどね(笑)。

それでも、今は囲碁を教える機会も増えて、「昔の自分」に出会うことも多くなりました。「手抜きしていいんやで!」って、声をかけたくなることもしばしば(笑)。

六段以上の壁は高すぎて、もう修行みたいなので……これからは楽しく囲碁を続けながら、少しでも普及につながることができたらうれしいなと思ってます。

この記事が、伸び悩んでいる方や、何かヒントを探している方にとって、少しでもお役に立てたら幸いです。

コメントを残す