囲碁Webサービス「いごもん」にみる普及と持続性 —— マネタイズの課題と可能性

◆ 新しい囲碁体験を生み出す「いごもん」
近年、囲碁界にも多様なデジタルサービスが登場しています。その中でもユニークな存在が「いごもん」です。
「いごもん」は、局面図を提示し「次の一手」をユーザーが選択、投票結果をアンケート形式で確認できるWebサービスです。詰碁や定石の正解を覚える場ではなく、「みんなならどの手を打つのか」という思考の共有に価値を置いています。
この仕組みは、従来の囲碁学習とは異なる、新しい参加型の学びと交流を実現しているといえるでしょう。
◆ 囲碁界におけるマネタイズの難しさ
ただし、このような魅力的なサービスの持続には「収益化の仕組み」が不可欠です。
ところが、囲碁界全体を見渡すと、マネタイズは必ずしも容易ではありません。
- スポンサーの数が少なく、将棋や麻雀に比べると広告価値が限定的
- 囲碁人口は一定数存在するものの、高齢層が中心でデジタル課金文化との相性が弱い
- 教室や大会運営も多くが「非営利的」「赤字覚悟」で支えられている
こうした事情から、「良質なサービスほど持続性に課題を抱える」という逆説的な現象も生まれやすいと考えられます。
◆ 広告依存に頼らない可能性
「いごもん」のようなサービスを続けていくためには、広告以外の方法も検討に値するかもしれません。たとえば以下のような方向性が考えられます。
- サポーター制度(寄付・応援課金)
小額でも「応援したい」という気持ちを形にできる仕組み。 - 解説付きプレミアムコンテンツ
投票に棋士やAIの解説を加えることで、学習サービスとしての価値が高まる可能性。 - 電子教材・出版
人気問題をまとめた電子書籍や教材として販売する形もあり得る。 - イベントとの連携
「いごもん杯」のような大会を企画し、参加費や協賛を得る取り組み。 - クラウドファンディング的支援
継続運営を応援するサポーターを募り、コミュニティの支えとして可視化する方法。
これらはあくまで一例に過ぎませんが、いずれもサービスの世界観を壊さず、利用者と共に成長していく形を模索できる可能性を示しています。
◆ 囲碁普及とデジタルサービスの未来
「いごもん」は、囲碁という伝統的な文化をデジタル時代に適応させた象徴的な試みといえるでしょう。
収益化の在り方をどう設計するかによって、その持続性は大きく変わってきます。
筆者自身、実際に「いごもん」を利用してみて、そのシンプルさと楽しさに強く魅力を感じました。
同時に、このような優れたサービスが収益基盤を持たないまま続くことの難しさも意識させられます。
もし「いごもん」のようなサービスが独自の収益モデルを確立できれば、それは単なる一サイトの成功にとどまらず、囲碁界全体にとって新しい可能性を示す事例となるかもしれません。
持続可能な囲碁の未来を考える上で、「いごもん」の存在は小さくない意味を持つでしょう。