囲碁コラム

【清楽 碁物語 第1話】碁は、子どもが親に教える遊びだった?

「囲碁って、覚えるのが難しそう」——そう思って手を出せずにいる人は多いはずです。

でも、もし「碁はもともと、子どもが親に教えた遊びだった」としたら、少し見方が変わりませんか?

この連載では、沖縄の囲碁クラブ「清楽(せいらく)」の席亭・宮国利一さんが書いた入門物語を、少しずつ紹介していきます。

📌 この回でわかること

  • 「清楽 碁物語」ってどんなお話?
  • 著者・宮国利一さんってどんな人?
  • 宮国さんが考える「囲碁のはじまり」と、碁が広まらない理由

「清楽 碁物語」ってどんなお話?

宮国さんが、囲碁を広めるために自費出版まで考えて書いた原稿です。残念ながら本にはならず、このまま眠らせるのはもったいない!ということで、このサイトで紹介させてもらうことになりました。

読みどころは3つあります。

  • 勝ち負けは「地」ではなく「盤の上に残った石の数」で決める、ちょっと変わった教え方
  • 先生と3人の生徒の会話で進むので、マンガを読む感覚で読める
  • 入門書なのに、強い人が読んでも「なるほど」と思う、碁のとらえ方

※ 読みやすくするために少し手を入れていますが、構成と内容は原稿のままです。

著者・宮国利一さんってどんな人?

  • 沖縄県代表に何度も選ばれた、沖縄囲碁界のレジェンドのひとり
  • 声が大きくて迫力満点。なのに碁はとても繊細。力ずくの碁が多い沖縄で、お手本のようなきれいな碁を打ちます
  • 囲碁の歴史やルールまで調べ上げる勉強家
  • NPO法人「清楽」の代表として、囲碁の普及に取り組んでいます

ちなみに筆者は、ぬちまーす杯で二子置かせてもらって対局し……見事に負けました。

宮国さんの原稿「はじめに」

ここからが宮国さんの原稿です。

📖 原稿より

碁は、子どもたちの遊びから生まれた

はるか昔、子どもたちは親が獲った獲物や収穫物の番をするため、石を置いたり縄をはったりして、自分たちのなわばりを主張した。

これが「囲碁」の成り立ちである。

雨や嵐の日には、番小屋や岩かげでドングリや小石を集め、お手玉、石けり、おはじきに興じる。退屈などしていられない。親たちも加わっただろうか。

やがて誰かが地面に線を引く。四角の中に縦と横の線を入れると、「何か」のゲーム盤ができあがる。盤と駒(ドングリ、小石、貝がら)があれば、どんなゲームでも思いつく。

遊び好きな子どもたちは、こうしてあらゆるゲームを創っただろう。「碁」のルールが単純明快なのは、当然の理由なのだ。

五路盤からはじまって、やがて線を増やしていく。子どもたちが夢中になるのは、なわばり争いとイメージが重なるからか。あるいは「重たい石を入れ物から盤上へ、早くたくさん運び終えるゲーム」だったかもしれない。うまい仲間とやると、せっかく運んだ石を自分の入れ物に戻されたりして。

九路盤くらいに進むと、親たちも熱中した。その昔、碁は子どもたちが親に教えたものだった。

なぜ、教えても続かないのか

二十一世紀の今、各地で碁の手ほどきが行われているが、なにやら力技で苦闘している報告が多い。

碁の打てる人なら、その魅力を伝えようと家族や仲間に手ほどきをし、入門書を渡して叱咤激励した経験があるはずだ。そのうち、教える側も教わる側もくたびれて熱がさめる。

なぜだろう。碁を覚えた人は、まるで偶然か、不思議な「稀」な人だ。

親子の碁は世界の碁

はるか昔、子どもが親に碁を教えたのなら、私もあなたも昔に還って、子どもたちと一緒に「碁」を創ってみよう。

だれでも簡単に覚えて、すぐ打てる。「親子の碁は世界の碁」だ。まずは二十級をめざして、のんびりいきましょう。

お母さん、碁はこんなゲームです。はじまり、はじまり。

「清楽便り」より

この「はじめに」は、囲碁教室「清楽」の会報「清楽便り」から引いたものだ。そこには、こんなことも書いてある。

「一生の友」や「キング・オブ・ゲーム」と呼ばれる「碁」は、遠い昔、子どもたちが小石などを並べていたのが始まりと考えられます。

4つほどの簡単なルールで「相手より多くの石を盤上に残す」ことを目指す、わかりやすいゲームです。こんなに単純で奥深く楽しいのに、あまり広がらないのは、今までの教え方に原因があったのではないでしょうか。

当教室では、この教え方の問題点を乗り越えて、指導方法をシステム化しました。この方式なら、入門した人がすぐに次の人へ教えられるのです。

ここまで読んで、私は半信半疑のまま教室へ出かけた。

編集部のひとこと

囲碁の起源には諸説あります。中国には「古代の王・堯(ぎょう)が、息子に碁を教えた」という有名な伝説があります。つまり伝説では「親が子に教えた」。

ところが宮国さんは「子が親に教えた」と、まったく逆を言っています。もちろんこれは宮国さんの推理ですが、「子どもが自然に遊べるくらい単純なゲームなのだから、教え方を変えればだれでも覚えられるはず」という思いが込められているように感じます。

✅ 第1話のまとめ

  • 宮国さんは、碁は子どもの「なわばり遊び」から生まれたと考えている
  • だからルールは単純。広まらないのは「教え方」に原因がある
  • 清楽式では、「盤の上に石を多く残したほうが勝ち」と教える

次回予告

いよいよ「清楽囲碁教室」の授業がはじまります。先生は台湾出身の王幸福(ワン・シンフ)先生。生徒はブラジルからの留学生ボガードさん、シンガポール出身のミミさん、小学2年生の翔くんの3人です。

第2話は「碁の勝ち負けはどう決まるの?」。お楽しみに!

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